宇宙線到来方向の非一様性
過去の様々な観測から、宇宙線の到来方向にはわずかな (±0.2%程度) 非一様性があることが知られています。 主な原因はふたつ考えられます。ひとつは、電荷を持つ宇宙線が太陽系の比較的近傍の星々の間に 存在する磁場に影響を受けて発生する宇宙線の「流れ」による、というものです。 これについては、観測された宇宙線到来方向の非一様性をモデル計算などから再現することで、 太陽系近傍の星間空間磁場構造についての情報が得られます。 非一様性を作るもうひとつの原因は、太陽系の銀河系内での運動です。 雨の日に車で走っていると前方から雨粒を多く受けているように感じるのと同じように、 我々 (太陽系) がある方向に動いていると、その方向からの宇宙線が多く到来しているように観測されます。
北天領域の宇宙線の到来方向分布マップ。横軸、縦軸はそれぞれ赤経、赤緯。
赤は宇宙線到来頻度が高い方向、青は低い方向で±0.2%程度の差がある。
白の実線は銀河面を、白の点線は天の赤道を表す。
これまでの研究成果
チベット空気シャワー観測装置で得られた高統計の宇宙線観測データを使って、多くの成果を上げてきました。300 TeV以上のエネルギーでの新成分
エネルギー別に宇宙線の到来方向分布を調べたところ、300 TeV以上のエネルギーではそれ以下のエネルギーでは見られない、 新しい非一様性の成分があることがわかりました。この結果はIceCubeグループによる南天の400 TeVの結果にスムーズにつながります。 原因は今のところ謎で、世界中の関連分野の研究者がこれを解明しようとしています。
エネルギー別の宇宙線の到来方向分布マップ (左) と赤経方向の強度 (右)。エネルギーは上から10 TeV, 50 TeV, 100 TeV, 300 TeV, 1000 TeV。
左図では、青い部分は平均より頻度の低い方向、赤い部分は平均より頻度の高い方向を表している。
300 TeV 以上のエネルギーでは、それ以下のエネルギーとは異なる成分があることがわかる。
(M. Amenomori et al., The Astrophysics Journal, 836, 153, 2017)
(M. Amenomori et al., The Astrophysics Journal, 836, 153, 2017)