Tibet ASγ Experiment

超高エネルギーガンマ線天文学

宇宙からやってくる非常に高いエネルギーを持った水素から鉄までの原子核 − 宇宙線 − は1912年にオーストリアの物理学者ヴィクトール・ヘスによって発見されました。 4 ×1015 eV (電子ボルト) = 4 PeV (1 eV ≒ 1.6×10-19 J) 程度以下のエネルギーを持った宇宙線は銀河系内の加速天体 (PeVatron)、 例えば超新星の残骸などで作られていると考えらていますが、 その源 PeVatron については未だに特定されていません。 宇宙線は電荷を持っていますので、地球に到達するまでに銀河系内の磁場で進行方向を曲げられるため、 宇宙線の到来方向が決まっても、それは源の方向を指し示してはいないのです。 一方、源で作られたPeV領域宇宙線の一部は、その周辺にあるガスにぶつかり、 元の宇宙線の10分の1程度のエネルギーを持った100 TeV (1014 eV) 領域ガンマ線を生成します。 ガンマ線は磁場で曲げられないので、光と同じように、 地球で観測した到来方向が源の方向を指し示しています。 我々はこのような100 TeVガンマ線を世界で初めて観測することによって、宇宙線の源を探します。

これまでの研究成果

2014年から観測を開始した地下ミューオン観測装置を空気シャワー観測装置と連動することによって、 我々の装置のガンマ線に対する感度は飛躍的に向上しました。 数10 TeV以上のエネルギー領域では世界最高感度を誇ります。

史上最高エネルギーガンマ線の検出

我々は地下ミューオン観測装置のデータを用いて、 100 TeV以上のエネルギー領域で宇宙線雑音を千分の1以下にすることに成功しました。 本研究では、2014年から約2年間のデータを解析し、地球から約7000光年離れた「かに星雲」方向から約20個の100 TeVを超えるガンマ線を世界で初めて観測 (5.6σの有意度) しました。 それらのガンマ線のうち最も高いエネルギーを持つものは450 TeVにも達し、これは他の天体を含め、観測史上最も高いエネルギーのガンマ線です。 この成果によって、新しいエネルギー領域であるsub-PeV (1 PeV = 1015eV) 領域ガンマ線天文学の扉が開かれたことになります。

東京大学宇宙線研究所 プレスリリース

宇宙線エネルギー分布

チベット空気シャワー観測装置と地下ミューオン観測装置によって観測された「かに星雲」方向のガンマ線有意度地図。 左図はエネルギー10 TeV以上、右図は100 TeV以上。色が赤から白にかけて有意度が高くなる。中心の×印はかにパルサーの方向。
(M. Amenomori et al., Physical Review Letters, 123, 051101 (6 pp.) (2019)
[Physics Viewpoint])


宇宙線エネルギー分布

かに星雲からのガンマ線のエネルギー分布。 赤丸がチベット空気シャワー観測装置と地下ミューオン観測装置によって測定された流量。
(M. Amenomori et al., Physical Review Letters, 123, 051101 (6 pp.) (2019)
[Physics Viewpoint] [arXiv])

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